「どこに打ってもいいですよ」
「はい、台上いっぱいに使って打って、どうぞ」
「どこでも返しますから、大丈夫よ」
はじめてお手合わせしたとき、存在感あるこの老婦人はこう言いました。
10数年ぶりにラケットを持った私を気遣ってなのでしょうか。
やさしい心遣いと受け止めましたが、その自信あふれる言葉が堂に入っています。
だんだん様子が分かってくると、この老婦人は、サークルの女性陣のリーダー格的存在で、男性陣も含めて一目置かれているようです。
背が高くどっしりした体格で、みるからに風格がただよっています。
「もっと速い球でいいですからね」
「どんどん強く打ってください」
言われるままに、勘を取り戻してきた私は強く打ち返します。いとも簡単に、ドライブがかかった速い球が返ってきます。
バックサイドにも打ってみます。シェイクハンドのバックで小気味よい球が返ってきます。
ラケットを下から上へ大きく振るわけではありません。
すくっと立って、身体の動きは大きくないのですが、無駄なくラケットを振り、ネットすれすれに強い球を打ち返してきます。
球に手早くラケットの面を合わせるのが上手なのでしょう。
どんな球でもブロックするように打ち返してくるのです。
もちろんカットもお得意ですが、私との練習の時は私の希望もあってドライブで打ち合います。
強いラリーが少し続くと、「いいじゃないですか」と私の力量を探るかのように、速攻でどんどん打ってきます。
老婦人と私との相性は決して悪くありません。私のとって気持ちのよい練習相手でした。
「また、やりましょうね」と言ってくれた老婦人は、さて私をどう思っていたのでしょうか。
つづく
(写真と当サークルは関係ありません)
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